コロナ禍での訪問看護の影響や課題を考えてみる

◇コロナ禍ではどのような影響が出ているのかを考えてみる

年も明けてコロナがどのような状況になるのか年末年始から注視している看護師様も多いと思います。東京都内で2020年12月31日、新型コロナウイルスの感染が確認されたのは初めて1000人を超えてしまい、これまでで最も多い1337人となりました。

コロナ感染の急速な拡大に歯止めがかからない状況です。また、入院患者も過去最多、重症の患者も緊急事態宣言が解除されたあとでは最も多くなるなど、医療提供体制のひっ迫の度合いが増すことも懸念されます。

全国でも感染者が止まらない状況の中、コロナ禍での訪問看護への影響や課題を本日は考えてみたいと思います。特に看護師様の求人周りを中心としながら本日は講義をしていきたいと思います。

◇コロナ禍では実は訪問看護に転職する看護師が増えています

看護師様の転職市場と言えば、花形はもちろん病院への転職になります。しかし昨年から少しづつこの状況も変わってきております。どのような変化があったのかと言えば、訪問看護ステーションへの転職を希望する看護師様が圧倒的に増えたことです。

看護師様の中には、「コロナがあるのに、人の家に行くのが心配で訪問看護ステーションへの転職は興味があったのですが、今年は避けています。」という方もいると思います。しかしながら実は全く逆の考えで転職されている方が多くなっているいるのです。

つまり病院では不特定多数の患者様が毎日外来にくるために、患者様の背景などももちろんわかりかねます。東京や大阪の大病院となれば1日に1,000人を超える外来患者様との接点を持つこともあります。外来勤務でなく病棟勤務であっても同様に、平均在院日数をクリアするためにも短い日数で入退院を対応する必要があります。急性期病院であればなおさらですよね。

一方で訪問看護と言うのは、1日4件~6件の訪問になります。訪問先に関しても全く知らない人の家に行くことは絶対にありません。依頼のあった利用者様、つまり契約のある利用者様のご自宅に伺うために、どのような症状なのか?どのようなご自宅なのか?どのような家庭的背景があるのか?を理解したうえで訪問する事が可能になります。

つまり訪問看護は病院のように不特定多数に会うのではなく、特定少数にあう看護業務が訪問看護ステーションの業務になります。つまり相対的にコロナの影響や課題を受けにくかったり、予防しやすいという理由から訪問看護ステーションへの転職希望者が増えてきております。それと相関するように訪問看護ステーションの求人も増えてきている事実もあります。

もちろん訪問看護ステーション自体は地域包括ケアシステムの為の重要な役割になっているために、年々増加しており、求人数が増えている事も事実ではありますが、「訪問看護ステーションに転職したい!!」看護師様がどれだけいたかと言われれば、本当に少なく全体の1%~3%の推移だったのですが、昨年からは約36%の看護師様が訪問看護への転職希望になっております。

これはまさにコロナの影響での大きな変化と言えるでしょう。看護師様の転職/求人市場も大きく変えたと感じております。

◇コロナが訪問看護ステーションに与えた影響と言えば経営状態が大きな課題です

訪問看護ステーション自体が増え、地域包括ケアシステムの重要な役割であれば訪問看護師が増えて逆にコロナかの影響が好転しているのでは?と思われがちなのですが、実は大きな課題があります。

昨今の病院の状況と言えば、病院数も病床数も減少し、在宅医療に向かっています。つまり訪問看護により注目され、役割も重要と考えられています。ではコロカ禍の中どのような課題が浮き彫りになったのでしょうか?それは訪問看護ステーションの経営状態に関わる事になります。この経営状態と言うのは実は採用問題とも相関があるのです。

というのも訪問看護師は認知も広がり始め年々増えているのもの、2025年には厚生労働省の見立てでスト12万人必要であると考えておりますが、現状の訪問看護師様は約45,000人と考えると約7万~8万人まだ訪問看護師が圧倒的に足りていないという大きな課題があります。

訪問看護師が足りないとどうなるのか?これは実はシンプルで経営を圧迫してしまいます。看護師がいなければ、利用者宅に訪問する事もできませんし、もっと言えば新規で利用者様と契約する事もできません。つまり看護師様の採用が出来ないと、訪問看護ステーションとしては利益が出ない為に経営悪化してしまいます。特に訪問看護ステーションの経営で考えると、経営手腕にもよるのですが、ある一定の人数がそろわない限り赤字になってしまう可能性が高いです。

なるほど!!潰れる訪問看護と成長する訪問看護の違いは何?を徹底解説。

◇なぜ訪問看護ステーションは採用が上手くいかないのでしょうか?

コロナ禍に関わらず訪問看護ステーションの採用になぜ課題があるのか考えてみましょう。第一は、研修や教育プロセスの問題だと考えます。訪問看護ステーションの利用者様は、病院のように急性期/回復期/慢性期や診療科のように区分けされていません。

そのため、訪問看護師には子どもから高齢者まで、急性期から慢性期まで、内科から精神科まで、すべての利用者に対応することが求められるます。つまり、訪問看護師は、病院勤務の看護師に比べ、専門的な知識や経験を広範囲に深める必要があるのです。

この幅広い知識や経験をカバーできる研修や教育プロセスを持つことは、大手訪問看護法人にならない限りは収益的には難しいと思います。中小規模の訪問看護ステーションでは、日々の業務を考えると研修に人員を割く余裕がないのも事実あると考えます。

しかし最近では看護学校での教育も変わり、新卒で訪問看護や20代でも訪問看護が出来る法人も増えてきているために状況としては大きな変化もあり希望が持てるポイントでもあります。

第二には、経営面の課題が挙げられる。全国の訪問看護ステーションの収支差において、全体の3割程度の事業所は赤字とみられる。また、訪問回数200回以下、常勤換算職員数4.5人より少ない事業所が赤字となっており、訪問回数や職員数が少ないところほど、経営は厳しい状況にある。

つまり、経営が厳しいから採用が出来ない。採用が出来ないからより経営が厳しくなると、悪しきスパイラルにはまってしまい結果的に採用活動が進まなくなってしまいます。コロナ禍の影響により、採用自体は多少は良い変化があったかもしれませんが、一方でコロナの影響により訪問件数が減ってしまえばこれもまた利益を圧迫してしまう事になります。

つまり外部環境を考えながら、訪問看護ステーションを経営する必要があり、看護業務とはまた異なるスキルが必要になる事は、コロナが生んだ副次的な課題ともいえるでしょう。

◇コロナの影響により経営の課題がある訪問看護ステーションは何をすべきなのか考える

中長期的には様々出来る事、やるべきことはあります。様々な物事を数値化しながら、しっかりと予算を組み立てながら採用活動や、利用者様の獲得と言うのもまた訪問看護ステーションでは大切な指標になってくるでしょう。

一方で目下足元の経営状態で考えれば、第3波のコロナの影響で大きく経営課題を抱えてしまったステーションもあるでしょう。そんなステーションを経営されている皆様に、下記のような補助金を出してくれる制度もあるので、これらを活用しながら経営課題を改善する事を進めるのもまた1つの手段ではあります。

補助金などは認知も低い為に、税理士や社労士やコンサルタントなどと情報交換をしながらコロナ禍での補助や援助を受けて経営する事も、経営者として重要な情報収集になります。

制度(1):新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)(厚生労働省
・都道府県を主体とし、新型コロナウイルス感染症への対応として緊急に必要となる感染拡大防止や医療提供体制の整備等を目的とした、補助または助成が実施されている。
制度(2):新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)(厚生労働省)
・都道府県を主体とし、新型コロナウイルス感染症への対応として、最大限の感染症対策を継続的に行いつつ、必要な介護サービスを提供する体制を構築することを目的とした補助または助成が実施されている。
制度(3):セーフティネット保証5号(経済産業省)
・経営に支障を生じている中小企業に対して、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で借入債務の80%保証を行う制度。訪問看護ステーションが救済対象として追加された。

コロナ禍が訪問看護ステーションにあたる影響は、今後の在宅医療の発展を大きく阻害してしまう可能性が高い為に、まずは短期的な経営解決をしステーションを延命させることも大切な事だと感じます。そしてその先に、大きな改革や希望が見えてくると感じます。

 

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