訪問看護の醍醐味とは!?

訪問看護の醍醐味とは!?

現在、入院期間の短縮化が進み、医療ニーズの高い患者さんが退院後に在宅で療養生活を開始するという場面は多くなっています。
介護や医療の中で訪問看護は注目されている存在であり、看護師の中でも訪問に興味を持っているという看護師は多くいます。
訪問看護師の勤務を見ても、夜勤はなく大体が暦通りで稼働しているため家庭を持つ看護師はプライベートとの両立ができるという利点から訪問看護へ進もうと考えている看護師もいるのではないでしょうか。
筆者も同様の理由から訪問看護をはじめましたが、病院看護との違いや家族看護の難しい場面に直面し「辛くてしんどい…」とくじけそうになった場面は多々ありました。
しかし、続ければ続けるほど、訪問看護を行って良かったと思える自分がいるのも事実です。
ここでは、訪問看護に興味がある方やこれから転職をする方へ訪問看護の醍醐味をお伝えしたいと思います。

病院看護との違い

筆者が一番苦労したことは、病院看護と在宅の違いです。 例えば、病院では薬の自己管理が難しい患者さんに対して看護管理とします。 しかし、在宅では間違った方法で内服していても、利用者さんや家族が自分たちで管理したいという強い希望があれば、看護師は手出しできません。 もっと分かりやすい例では、病院では患者さんを転倒させてしまうと病院側の責任ですが、在宅では訪問看護師にその責任はありません。 前者の例は筆者が経験した内容なのですが、内服の管理を看護師で行う事を強く提案した際に利用さんから「上から目線で物を言う生意気な看護師」とクレームがありました。 この場合、利用者さんの自己管理をしたいという希望を優先しなければなりませんでした。 後者の場合、在宅での責任は訪問看護にはないとしましたが、転倒が予測できるような身体状態や家具の配置の場合、利用者さんの了承を得て杖を導入したり、配置換えをしたり、環境整備を行います。 また、段差にはスロープを設置するなどの対策が必要です。 そのような対策を行ったうえでの転倒の場合は責任問題には発展しません。 これらの例から、在宅では患者さんや利用者さんの希望が第一となるため、訪問看護師が良い事と思って無理やり看護を提供しても、それは利用者さんのためにはなりません。 むしろ「もう来ないでくれ」と門前払いされることもあります。 在宅では、まずは利用者さんや家族が「どのように自宅で過ごしたいのか」「訪問看護師に行ってもらいたいことは何か」をヒヤリングすることから始まります。

社会資源や制度の仕組みを理解する

訪問看護は医療保険か介護保険を利用して介入することができます。 この二つの保険で、どちらを利用するかは利用者さんの年齢や疾患によって異なります。 利用者さんはお金に大変シビアな方が多く、訪問看護師が週に3回は訪問した方がよいと考えていても、実際利用者さんは週に1回の訪問で十分と考えている場合もあります。 料金的な部分は、その訪問看護ステーションによって違いがあるため、配属先の訪問看護ステーションで緊急時やお見取り、交通費などの加算は把握しておくようにしましょう。 また、保険を使ってどのぐらいの料金になるのかも把握して答えられるように把握する必要があります。

訪問看護こそチームプレー

訪問看護師は一人で訪問をして看護を提供すると思っていませんか? それは事実なのですが、アセスメントや判断に困った時は、必ずそのままにせず同僚や上司に相談してからその場(在宅)で対応をします。 例えば、独居の利用者さんが苦しんでいる時に、対応の仕方が分からずそのままにして訪問を終了することはできません。 次に訪問看護が来る日まで、その利用者さんが苦痛なく日常生活を営めるかどうかを判断して対応することが必要です。 また、一人の利用者さんには、一つの訪問看護ステーションだけが関わるのではなく、訪問診療医、訪問薬剤師、リハビリ、ケアマネジャー、民生委員、近所の人などが関わり合っており、状態の変化や必要な情報は必ず情報共有を行います。 現在はその情報共有がしやすいようにiPadを持ち歩き、SNSを通じて情報共有を行うことができます。 在宅は基本的に一人での訪問ですが、多職種間や看護師間でのチームプレーで一人の利用者さんを看ているため看護師も心強いと思います。

辛い局面に出会えたことはチャンスでもある

筆者も訪問看護を行う上で辛いと思ったことは、利用者さんからクレームがあった時、自分の判断が間違っており同僚や家族から指摘があった時です。 しかし、「ああダメだった…」と落ち込むばかりではなく、それらを振り返り自分の弱い部分を受け入れて改善しようとしました。 実際、自分の欠点を受け入れることはとても苦しかったですが、逆にそれを乗り越えると、次は気を付けようとし、同じ場面に出くわした時には自分でも対応が出来るようになります。 訪問看護は自宅で看護を提供すため、利用者さんから頼りにされ、信頼関係も築きやすいですが、苦情も出やすい環境でもあります。 しかし、自分への苦情や他のスタッフから注意された点は、しっかり自分で受け止めて改善していく事が重要であると訪問看護を行い気が付かされた点です。 訪問看護を行うと同じ利用者さんや家族はおらず、ルーティンワークは決してありません。 一人一人が在宅でどのように過ごしたいかは皆違うため、その利用者に合った看護を提供する必要があります。 しかし、以前自分がミスした点は二度と起こさないようにしようと気を付けるだけでも看護師としての視野が広がるようになります。 そしてその繰り返しで訪問看護にも慣れ、利用者さんと家族から頼りにされる看護師になる事でしょう。 病院では規則がありますが、在宅ではそれがありません。 利用者さんの希望に沿える看護を提供できることは、訪問看護師の醍醐味ではないでしょうか。