エモーショナル・インテリジェンスが訪問看護ステーションで働く看護師の職場の人間関係に与える影響

訪問看護ステーションで働く看護師さんにとって、職場の人間関係は非常に重要です。患者さんやそのご家族、そして同僚との良好な関係が、質の高い看護ケアを提供するための鍵となります。そんな人間関係を円滑にするために、エモーショナル・インテリジェンス(以下、EI)が大いに役立ちます。今回は、EIが訪問看護の職場の人間関係にどんな影響を与えるのか、わかりやすく説明します。

エモーショナル・インテリジェンスってなに?

まず、エモーショナル・インテリジェンス(EI)とは、自分や他人の感情を理解し、上手に扱う能力のことです。具体的には、以下のスキルが含まれます。

  1. 自己認識:自分の感情を理解し、それが行動や思考にどう影響しているかを知ること。
  2. 自己管理:自分の感情をコントロールし、適切に表現すること。
  3. 社会的認識:他人の感情を読み取り、共感すること。
  4. 人間関係管理:良好な人間関係を築き、維持する能力。

訪問看護ステーションでEIが重要な理由

訪問看護師さんの仕事は、患者さんやそのご家族との関わりが中心ですが、同僚や上司とも多くのコミュニケーションをとります。ここで、EIが高いとどんなメリットがあるか見てみましょう。

  1. ストレスの軽減: EIが高いと、自分の感情をうまくコントロールできるので、ストレスを感じても冷静に対処できます。例えば、忙しい日でも焦らず、冷静に患者さんに接することができます。また、他の看護師さんとのトラブルがあっても、感情的にならずに解決策を見つけることができます。
  2. 円滑なコミュニケーション: EIが高いと、他人の気持ちを察することができるので、相手が何を考えているか、どんな気持ちなのかを理解できます。これにより、誤解が少なくなり、スムーズなコミュニケーションが可能になります。看護師同士が良好な関係を築くことで、職場全体の雰囲気もよくなり、患者さんも安心してケアを受けられます。
  3. チームワークの向上: 訪問看護では、看護師同士が協力して働くことが求められます。EIが高いと、他の看護師さんの強みや弱みを理解し、お互いに補い合うことができます。これにより、チーム全体が効率よく働けるようになり、より質の高いケアが提供できます。
  4. 患者さんやご家族との良好な関係: 患者さんやそのご家族とのコミュニケーションも、EIが高いとスムーズに行えます。患者さんの不安や心配に共感し、適切な対応をすることで、信頼関係を築くことができます。これにより、患者さんやご家族からの信頼が厚くなり、看護ステーション全体の評判も良くなります。

 

訪問看護での具体的なEIの活用例

EIを高めるための具体的な方法を、訪問看護のシーン別に紹介します。

毎日の業務でのEIの活用
  1. 朝のミーティング: 朝のミーティングで、看護師同士が昨日の出来事や今日の予定を共有します。ここで、自分の気持ちを正直に話し、他の看護師の気持ちに耳を傾けることが重要です。例えば、「昨日は忙しくて疲れてしまいましたが、皆さんのおかげで乗り切れました」と感謝の気持ちを伝えると、他の看護師も共感しやすくなります。
  2. 患者さんの観察: 患者さんの様子を観察し、感情の変化に気付くこともEIの一環です。例えば、いつも穏やかな患者さんが今日は不安そうだなと思ったら、「どうしましたか?」と声をかけ、気持ちを引き出すことで、信頼関係を築くことができます。
トラブル時のEIの活用
  1. 同僚との意見の違い: 看護方針や患者さんへの対応について、同僚と意見が食い違うことがあります。そんな時は、感情的にならず、冷静に話し合うことが大切です。「私はこう思うんだけど、どう思う?」と質問することで、相手の意見も尊重しながら自分の考えを伝えることができます。
  2. 患者さんやご家族からのクレーム対応: 患者さんやそのご家族からのクレームは、看護師にとって大きなストレスになります。しかし、EIが高いと、クレームを冷静に受け止め、相手の気持ちに共感することができます。「ご心配なお気持ち、よくわかります。私たちも最善を尽くします」と伝えることで、不安を和らげることができます。
自己管理とリフレクション
  1. 感情のリフレクション: 一日の終わりに、自分の感情を振り返る時間を持ちましょう。「今日はどんな感情を感じたか?なぜそのように感じたのか?」と自問自答することで、自己認識が深まります。例えば、「今日、患者さんが元気なくて少し心配になった」と気付いたら、明日はどう対処するかを考えることができます。
  2. ストレス管理: ストレスを感じた時は、自分に合ったリラクゼーション法を見つけることも重要です。深呼吸や軽い運動、趣味に時間を使うなど、自分の心をリフレッシュさせる方法を取り入れましょう。例えば、「今日は忙しかったから、帰宅後に少し散歩してリフレッシュしよう」と計画することで、次の日に向けたエネルギーを充電することができます。

EIがもたらす具体的な効果

EIを高めることで、具体的にどんな効果が得られるか、いくつかの例を挙げてみます。

  1. トラブルの減少: 感情的なトラブルが減り、冷静に話し合うことができるため、職場の雰囲気が良くなります。これにより、看護師同士の信頼関係が深まり、より良いチームワークが生まれます。
  2. 職場のモチベーション向上: お互いに感謝の気持ちを持ち、サポートし合うことで、職場全体のモチベーションが向上します。看護師一人一人がやりがいを感じながら働けるようになります。
  3. 患者さんへの良い影響: 看護師同士の良好な関係は、患者さんにも良い影響を与えます。患者さんは看護師の表情や雰囲気を敏感に感じ取ります。看護師が仲良く働いていると、患者さんも安心してケアを受けることができます。

EIを高めるための具体的なアクション

EIを高めるための具体的な方法をさらに詳しく見てみましょう。

  1. 自己反省の時間を持つ: 一日の終わりに、今日の出来事を振り返り、自分の感情がどうだったかを考えてみましょう。どんな時にストレスを感じたか、どう対処したかを振り返ることで、自己認識が深まります。
  2. 感情表現の練習: 感情を適切に表現することは大切です。例えば、困ったことがあれば、正直に「今は少し困っています」と伝えることが重要です。感情を抑え込まず、適切に表現することで、周りの人もサポートしやすくなります。
  3. 他人の気持ちに共感する練習: 相手の話をよく聞き、相手の立場に立って考える練習をしましょう。例えば、同僚が悩んでいる時は、「それは大変だね」と共感の言葉をかけるだけでも、相手は救われることが多いです。
  4. フィードバックを活用する: 上司や同僚からのフィードバックを積極的に受け入れましょう。自分では気づかない癖や改善点を知ることで、EIを高めることができます。

 

EIの効果を実感したエピソード

実際にEIを高めることで、どのような効果があったのか、いくつかの実例を紹介します。

  1. 看護師Aさんの例: Aさんは、同僚との意見の違いでよく衝突していました。しかし、EIを意識するようになってからは、自分の感情を冷静に見つめ直し、相手の意見にも耳を傾けるようになりました。結果的に、同僚との関係が改善し、チームとしてのまとまりも良くなりました。
  2. 看護師Bさんの例: Bさんは、患者さんやご家族からのクレーム対応が苦手でした。しかし、EIの重要性を学び、相手の気持ちに共感する練習を続けた結果、コミュニケーションがスムーズになり、信頼関係が築けるようになりました。
  3. 看護師Cさんの例: Cさんは、忙しい日々にストレスを感じていましたが、EIを高めるためのストレス管理方法を取り入れることで、感情のコントロールが上手になりました。これにより、職場でのパフォーマンスも向上し、患者さんにより良いケアを提供できるようになりました。

まとめ

エモーショナル・インテリジェンス(EI)は、訪問看護師さんが働く上で非常に重要なスキルです。EIを高めることで、職場の人間関係がスムーズになり、ストレスも軽減されます。日常の業務の中で、自己認識、自己管理、社会的認識、人間関係管理を意識して取り組むことで、EIは徐々に高まります。

ぜひ、今回紹介した方法を試してみてください。看護師同士が協力し合い、患者さんにとって最高のケアを提供できるように、EIを活用してみてくださいね。


エモーショナル・インテリジェンス(EI)についてさらに知りたい方へ

さらに詳しくEIについて学びたい方は、以下の本もおすすめです。

  • 『EQ こころの知能指数』:ダニエル・ゴールマン著
  • 『感情の力:職場の人間関係を豊かにする』:鈴木正人著

これらの本は、EIを高めるための具体的な方法や理論が詳しく解説されています。訪問看護師として、より良い職場環境を築くために、ぜひ読んでみてください。

訪問看護での仕事は大変ですが、EIを活用することで、より楽しく、充実した毎日を過ごすことができるようになります。皆さんが素晴らしい看護師として活躍できるよう、心から応援しています!

 

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