訪問看護師の転職のタイミングとその理由

訪問看護職を続けるということ

訪問看護の仕事は非常に充実している一方で、多くの困難やストレスも伴います。日々の業務に加え、先輩や上司への気配り、後輩の悩み相談など、負担が大きいことも少なくありません。そんな中で、「もう転職したい!」と思ったことがある方も多いでしょう。他の訪問看護ステーションなら、もっと高い給料を得られるかもしれない、人間関係のストレスが少ないかもしれない、訪問件数が減るかもしれないと考えることは自然なことです。ネガティブな時には、他の職場が輝いて見えるものです。しかし、転職が必ずしも問題解決の鍵ではないことを理解することも重要です。

訪問看護ステーションで働く看護師や理学療法士のストレス要因TOP5(自社調べ)

訪問看護ステーションで働く看護師や理学療法士が感じるストレス要因について、最新の調査とデータを基に解説します。訪問看護は患者の自宅に赴き、医療やケアを提供する仕事であり、その特性上、多くのストレス要因が存在します。

  1. オンコール体制のストレス 訪問看護ステーションでは24時間対応が求められることが多く、オンコール体制が一般的です。オンコール中は、常に緊急対応の準備をしている必要があり、夜間や休日でも緊急呼び出しがかかる可能性があるため、精神的な負担が大きいです​。
  2. 移動の負担 訪問看護の仕事は、患者の自宅を訪問するため、一日に何度も移動を繰り返します。この移動時間が長い場合や、交通状況が悪い場合は、肉体的にも精神的にも疲弊しやすくなります。また、悪天候の日の訪問も大きなストレス要因です​。
  3. 患者や家族とのコミュニケーションの難しさ 訪問先の患者やその家族とのコミュニケーションは、時に難しいことがあります。患者の状態や家族の期待に応えるために、慎重かつ効果的なコミュニケーションが求められますが、これがうまくいかない場合は、フラストレーションやストレスの原因となります。
  4. 業務量の多さとスケジュール管理の難しさ 訪問看護師や理学療法士は、多くの訪問件数をこなす必要があり、業務量が多いことがストレスの一因です。特に、予期せぬキャンセルや緊急訪問の依頼が入ると、スケジュールの調整が難しくなり、計画通りに業務を進めることが困難になります。
  5. 職場の人間関係 職場内の人間関係もストレスの大きな要因です。上司や同僚、後輩との関係がうまくいかない場合、精神的な負担が増します。また、訪問先でのチームワークが重要であるため、チーム内でのコミュニケーション不足や意見の対立がストレスを引き起こすことがあります。

対策と改善策

これらのストレス要因に対する対策として、以下のような取り組みが求められます:

  • オンコール体制の見直し オンコールの頻度を減らすために、スタッフ間でのローテーションや支援体制を強化することが有効です。
  • 移動時間の短縮と効率化 訪問ルートの最適化や交通手段の見直しを行い、移動時間を短縮する努力が必要です。例えば、電子カルテやモバイル端末を活用して、リアルタイムで訪問先の状況を把握することが有効です。
  • コミュニケーションスキルの向上 患者や家族とのコミュニケーションスキルを向上させるための研修やトレーニングを実施し、効果的な対話術を習得することが重要です。
  • 業務の効率化 訪問件数の見直しや業務の優先順位付けを行い、効率的に業務を進めるためのシステムを導入することが有効です。また、ICTの活用により、訪問記録や報告書の作成を効率化することも必要です​。
  • 職場環境の改善 職場内のコミュニケーションを活性化させ、定期的なミーティングや意見交換の場を設けることで、人間関係の改善を図ります。また、メンタルヘルスのサポート体制を整備し、スタッフが安心して働ける環境を提供することが重要です。

これらの対策を通じて、訪問看護師や理学療法士のストレスを軽減し、より働きやすい環境を整えることが求められます。

訪問看護師や理学療法士が転職を考えるべきタイミング

訪問看護師や理学療法士が転職を考えるべきタイミングは、いくつかの重要な要因を基に判断することが必要です。以下に、その具体的な状況と理由を詳しく説明します。

1. 仕事に対する満足度が低いと感じるとき

職場環境の悪化やストレスの増加

  • 人間関係のトラブルや職場の雰囲気が悪化している場合、精神的なストレスが大きくなります。特に、上司や同僚との関係が悪化し、業務が進めにくくなっている場合は、転職を考える良いタイミングです。

業務負担の過多

  • 仕事量が多すぎて健康に悪影響を与えている場合も、転職を考えるべきです。オンコール対応の頻度が高すぎたり、訪問件数が過剰である場合、労働環境の見直しが必要です。

2. キャリアアップを目指すとき

スキルの向上や専門性の拡充

  • 自分のスキルや専門知識をさらに高めたいと感じる場合、キャリアアップのための転職を考えることが有益です。特に、特定の分野(例:認知症ケアや終末期ケア)での専門性を高めるために、より良い教育機会や研修制度が整った職場を探すことが重要です。

キャリアパスの明確化

  • 現職でのキャリアパスが見えない場合や、昇進の機会が限られている場合、長期的なキャリア形成を考えて転職することが賢明です。

3. 給与や待遇に不満があるとき

給与や福利厚生の見直し

  • 給与や福利厚生に不満がある場合、同じ業界内でもっと良い条件を提供している職場を探す価値があります。特に、同じ業務内容で給与が大幅に異なる場合は、転職を検討する良い機会です。

労働条件の改善

  • 労働時間や休暇制度などの労働条件が改善される可能性がある職場への転職も考慮すべきです。バランスの取れたワークライフバランスが維持できる職場は、長期的な健康と幸福に寄与します。

4. 自己成長や新しい挑戦を求めるとき

新しい環境での挑戦

  • 長く同じ職場で働いていると、仕事がルーティン化し、自己成長の機会が減少することがあります。新しい環境での挑戦を求めることで、自分の能力を再確認し、新たなスキルを習得する機会が得られます。

異なる職場文化の体験

  • 異なる職場文化や働き方を体験することで、視野が広がり、柔軟な対応力が身につくことがあります。新しい職場での経験は、自己成長に繋がる貴重な機会です。

転職を考えるタイミングは、個々の状況やキャリア目標に応じて異なります。自身の満足度や健康状態、キャリアアップの機会、給与や待遇、新しい挑戦の必要性などを総合的に判断して決定することが重要です。転職は大きな決断ですが、適切なタイミングで行うことで、より充実した職業生活を送ることが可能になります。

最新の状況とエビデンス

厚生労働省のデータによると、訪問看護ステーションの数は年々増加しており、2023年時点で全国に約15,697施設が存在します【1】。これに伴い、訪問看護師の需要も高まり続けており、転職市場は活況を呈しています。また、日本看護協会の調査によれば、訪問看護師の離職率は依然として高く、多くのステーションが人材確保に苦慮しています【2】。

訪問看護師として働く中で、転職を考えることは自然なことです。しかし、転職のタイミングは慎重に見極める必要があります。自分の市場価値を高め、職場で高く評価されていると感じた時が、転職を考えるべき最適なタイミングです。キャリアアップやワークライフバランスの改善など、自分の目標に合わせた転職先を選びましょう。転職を通じて、より充実した訪問看護師ライフを築いてください。

 

参考文献:

  1. 全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーション数調査結果」
  2. 日本看護協会「看護職員確保の現状と課題」

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