令和2年度診療報酬改定~同一建物居住者に対する複数回/複数名の訪問看護の見直し編~

◇同一建物居住者に対する複数回・複数名の訪問看護の 見直し【改定】について考えてみる

令和2年度(2020年度)診療報酬改定によって訪問看護ステーションの経営はどのような影響が受けるでしょうか?前回は機能強化加算に関して考えてみましたが、本日はテーマはココ、同一建物居住者に対する複数回・複数名の訪問看護の 見直し【改定】について考えてみましょう!!前回の講義はコチラになるので合わせてご覧ください!!

令和2年度診療報酬改定による訪問看護の影響を考えてみる~機能強化加算編~

訪問看護と言えば看護様や理学療法士様がご自宅に訪問するサービスになりますが、病院やクリニックとは異なり、その名の通り”ご自宅に訪問”する必要があります。そう考えたときにネックになるのが”移動距離”になるのです。

この移動距離と言うのは、実は簡単に考えてしまうと経営的に大打撃を与えてしまう可能性があるのです。つまり看護師/理学療法士様の実働工数を移動工数が奪ってしまうために、経営者としては利益を圧迫してしまう可能性があります。※ここに関してはまた別途講義していきます。

「効率的な訪問かが可能な同一建物居住者」に対して、同一日に複数回の訪問看護、複数名による訪問看護を行う場合の加算に関しての評価体系が見直しされました。

それではまず実際に厚生労働省が発表指定くれているスライドを見てみましょう!!

難病等複数回訪問加算と精神科複数回加算は、同一建物居住者への訪問看護加算額が、「同一建物内に1人または2人または3人以上」に分かれました。

こちらのスライドの左上パートを文章化してみましょう。今までは、難病等複数回訪問加算は以下のような料金でした。

【改定前】1日に2回の場合は4,500円
【改定前】1日に3回以上の場合は8,000円

【改定後】1日に2回の場合は4,500円
1:同一建物内に1人⇒4,500円
2:同一建物内に2人⇒4,500円
3:同一建物内に3人以上⇒4,000円

【改定後】1日に3回以上の場合は8,000円
1:同一建物内に1人⇒8,000円
2:同一建物内に2人⇒8,000円
3:同一建物内に3人以上⇒7,200円

※同一建物共重者訪問看護・指導料の何病棟複数回訪問看護加算、精神科訪問看護・指導料の精神科複数回訪問看護加算についても同様

改定前であれば、同じ建物に効率良く複数回を何人も訪問すると、訪問看護ステーションの看護師様たちは、移動時間がかかることなく訪問することができていました。非常に効率的であると言えますね。

一方で支払う側から見てみると、同一建物内で移動工数ほとんどなく訪問看護しているにも関わらず、移動が伴う訪問看護と同一の診療報酬を支払うのでは納得感がない!!という思いがあったのかな?とも推察します。

例えば3件訪問で考えたときに、片道30分だと想定してみましょう。同一建物ではない場合の訪問看護の移動工数としては下記が想定されます。

ステーション⇒30分かけて利用者A様宅⇒A様宅から30分かけてB様宅⇒B様宅から30分かけてC様宅⇒C様宅から30分かけてステーションに戻る

こう考えると、ステーションから最初の訪問、最後の訪問からステーションの移動時間は仕方ないですが、その間の移動時間の30分×2の1時間は移動工数になってしまいますよ。つまり訪問件数が増えるほどに移動工数が増えてしまいます。

訪問看護というサービスなので移動は仕方ないですが、必要以上に移動距離が長かったり、効率を考えない訪問は経営に悪影響を与えることがわかりますね。そして移動工数が増えるという事は実働が出来なくなってしまうので、ステーションの経営にも大きくかかわってきますね。このケースで考えると移動工数の計算式としては・・・

移動工数=移動時間30分×(訪問件数―1)が想定の移動工数になるので、4件訪問なら90分、5件訪問なら120分が移動時間になってしまうのです。これが20稼働日あると思うとどれだけ移動は経営リスクがあるのかもわかりますよね。

これに対して同一建物であれば、基本的には移動工数が数分になるので同じ1件の訪問でも意味合いは大きく変わってきます。これらも加味しながらの同一建物居住者に対する複数回・複数名の訪問看護の 見直し【改定】だったのでしょう。では今回の改定のスライドを見てみましょう!!

◇難病等複数回訪問加算の見直しを考えてみる

左上の”複数回訪問看護×3名2回訪問”の例を見てみましょう。このイラストは看護師等が同じ建物の利用者に午前と午後に1回ずつ、1日に3名訪問したことを表していますね。
改定前であれば4,500円だったものが、同一建物内の訪問で移動工数がないので4,000円になったという事ですね。

右上の”複数回訪問看護×2名2回訪問+1名1回訪問”の例を見てみましょう。右の図は、看護師等が同じ建物に住んでいる利用者、AさんとBさんとCさんに対して、AさんとBさんとCさんに午前中訪問し、さらに午後にAさんとBさんにだけ訪問したことを表します。

この場合はAさんとBさんから訪問看護基本療養費(Ⅱ)+難病複数回訪問加算4,500円を算定することになり、Cさんからは「訪問看護基本療養費(Ⅱ)」を算定することになります。

◇複数名訪問看護加算の見直しを考えてみる

こちらもイラストを文章化してみましょう!!診療報酬改定前は、複数名訪問看護加算は”看護師等の複数名の場合は4,500円”という非常にシンプルなものでした。シンプルが故に納得感と言う意味ではまた疑問符が出てしまったが故の改定だったのでしょう。

つまりシンプルな”看護師等の複数名の場合は4,500円”という状態ですと、同じ建物に効率良く複数名で何人も訪問すると、より多くの診療報酬を支払う必要があったとも考えられます。これらを是正すべく診療報酬改定があったのでは?と想定されます。

それでは左の図の複数名による訪問看護のイラストから見ていきましょう。左の図は、看護師と理学療法士が同じ建物の人に1日に3名訪問したことを表します。

この場合は同一建物内にいる3名の利用者さんから「訪問看護基本療養費(Ⅱ)+複数名訪問看護加算(看護師等)4,000円」を算定することになります。改定前の場合は4,500円だったということになりますね。

では次に右の図を文章化していきましょう。右の図は、同じ建物に住んでいるAさんとBさんとCさんに対して訪問看護をしている事を表しています。
同一建物内利用者であるAさんとBさんには看護師と理学療法士が訪問看護をしている事になります。
同一建物内利用者であるCさんには看護師と補助者で訪問看護をしたことを表します。

この場合は同一建物内利用者であるAさんとBさんから「訪問看護基本療養費(Ⅱ)+複数名訪問看護加算(看護師等)4,500円」を算定することになます。
同一建物内利用者であるCさんからは「訪問看護基本療養費(Ⅱ)+複数名訪問看護加算(看護補助者)3,000円」を算定することになります。

※ 同一建物居住者訪問看護・指導料の複数名訪問看護・指導加算、精神科訪問看護基本療養費の複数名精神科訪問看護加算、精神科訪問看護・指導料の複数名精神科訪問看護・指導加算についても同様

改定された一方ではありますが、複雑性を増すと例外が出てきてしまうのも当然の話で「〇〇みたいなケースはどうすればいいのか?」というこのイラストだけでは判断できないケースも出てきてしまっているようです。

訪問看護を経営しているのであれば診療報酬はまさに経営のど真ん中の事柄になるので、慎重かつ正しく請求する事は重要な事になりますね。次回は理学療法士等による訪問看護の見直しや、医療資源の少ない地域における訪問看護の充実を考えていきましょう!!

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