■メンタルが弱い人はHSP (Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)なのですか?
訪問看護ステーションや病院で働いていれば、感心してしまうくらい「羨ましいな!」と時に思ってしまうくらい屈強なメンタルの持ち主の看護師もいるでしょう。逆に、メンタルが弱い看護師がいる事だって事実です。看護師/理学療法士の皆様は自分が「メンタル強い!!」と思いますか?思えませんか?
メンタルの強さ弱さに関しては、人や環境からの刺激がメンタルに影響を与えます。そしてメンタルが比較的弱いと言われているのが感受性が豊かすぎる人。このような超感受性が豊かな人たちをHSP (Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)と心理学では呼びます。
看護師の中にHSPの方がいるかもしれませんし、利用者/患者の中にもHSPの方がいる可能性が十分にあります。ある研究結果では10%はHSPの可能性があるとも記載があったので、10人に1人は居てもおかしくないって事ですよね。
最近はこのHSP (Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)という言葉を聞く機会は増えていませんか?HSPという言葉自体は一般的になっておりますが、誤解されているのはHSPと聞くと感受性が豊かで敏感で、メンタルが猛烈に弱い人というイメージがありますが、実際のHSPとは異なるのです。むしろ感受性が豊かな事は、「何も感じる事がない…」と感受性が全くない事よりも大切だと感じます。
そしてHSPは印象的に「メンタルが弱い人」とネガティブなイメージを持つかもしれませんが、実はそんな事もありません。もし訪問看護ステーションや病院でHSPと思われる看護師や患者様がいたら参考にしてください。心理学の最新トレンドは生まれ持った性格を治すというよりも、ある程度デメリットを認識し経験しながらその性格を活かすことが大切だと言われています。多様性という言葉がはやったようにHSPも個性の一つなのです。
今回の講義はまさにここです☆彡このHSP (Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)とはどのような人か?説明しながら、自分がHSPなのかどうか?の診断テストも記載するので、是非自分自身のHSP具合を数値化してみると良いでしょう☆彡自分自身がどのような環境に強いのか弱いのか?もわかるようになっています!!それでは講義のスタートです!!
◇:HSP (Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)って生まれつきですか?それとも環境要因ですか?
この超感受性が豊かなHSPになりますが、どうしてHSPになるのかを調べたのが2020年のロンドン大学クィーンメアリー校になります。
どのような実験かと言えば、一卵性及び非一卵性の17歳の双子を2820人集めて、それぞれの遺伝子と困難な状況に強いストレスや不安を感じやすいとか、逆にポジティブな感情を感じやすいというような外部環境への敏感さについてチェックしています。つまりある程度HSPには遺伝が関連しているのではないか?という仮説があるという事ですね。双子であれば似た環境にいるはずなので、環境が要因であれば二人ともHSPの可能性が高い!という事でしょう。
おや?HSPでポジティブな感情ですか?と感じた看護師/理学療法士もいるでしょう。ここがまさに誤解なのです。HSPとは周りの刺激の敏感さを表す指標なので、その刺激がネガティブであってもポジティブであっても、敏感に反応する人の事を言うのです。
ですので例えば訪問看護ステーションや病院で「ひどく落ち込みやすい」瞬間がある看護師も、もしかしたら逆にとても喜んでいたり楽しんでいたりすることもあるという事です。つまり、人よりもストレスや不安を感じやすいですが、ポジティブな状況では同様に幸せも人一倍強く感じる事が出来るのです。HSP=デメリットと思われがちですが、現実では沢山のメリットだってあるのです。
HSPの人たちは不思議とネガティブな側面だけを見てしまう傾向があるのですが、自分自身の特別な能力であるメリットをしっかりと認識する事が出来れば、日々の訪問看護業務でも活かせること間違いなしなのです☆彡
◇:HSPの看護師がいるなら周りの環境を整えてあげましょう
HSPはポジティブな事もネガティブな事も強く反応するので、まずは周りの環境を整えてあげる事が大切です。「気合と根性で乗り切りますよ!」と根性論でHSPをマネジメントする事はとても難しいと言えます。例えば若い看護師に「やればできる!」と言っても通じないので「最近の若い子は…」と感じてしまうかもしれませんが、若い看護師は感受性が豊かであり、若い看護師にしかできない能力も持っているのです。
それでははどうすれば良いのか?と言えば、周りの人間関係を整えてあげたり、環境を変える事の方が圧倒的にHSPの看護師との関係性は上手くいくのです。「気合と根性でやってくれない看護師」と烙印を押すのではなく、自分に持っていない才能を持っている看護師とメリットに目を向けましょう。
逆に若い看護師からみれば「気合と根性で仕事は乗り切る!」と言われれば、時代錯誤の老害と思われているでしょう。ここは看護師/理学療法士同士がお互いが尊重しあうべきですよ。
ではなぜ環境を整える事が必要なのかと言えば、ロンドン大学の実験はHSPの遺伝的な影響と、外部環境からの影響を研究しています。その結果わかったことは、遺伝的な影響が47%で、環境的な影響が残りの53%を占めていたのです。
つまり感受性の豊かさでもあるHSPの看護師や患者/利用者は、遺伝的な影響で約半分が生まれた瞬間に決まっているので、「本人の意志」とは関係なく、遺伝子レベルの事なので後から変えるのは難しいのです。
ただこれを悲観する必要はなく残りの半分は逆に言えば環境要因です。つまり環境や人間関係をかえることで、ストレスを感じにくくさせる事も可能です。そして遺伝レベルが半分な事もネガティブな事ではなく才能を与えられているのです。生まれながらに運動神経が良い人もいるでしょう。それと同じくHSPというのは才能である事を忘れてはいけません。
◇:HSPが才能というならば、その才能とはなんだ!?
HSPが人よりも傷つきやすい事。これは事実かもしれませんが特別な才能の持ち主である事も間違いありません。このロンドン大学の研究ではさらにどのような性格特性なのかも調べています。
あくまで”可能性”という結果になるのですが、HSPの人たちは外部環境からくる敏感さを持っており、”傷つきやすい/メンタル的に弱い”可能性はありますが、一方で外向性を左右している遺伝子の要素が強い可能性もあるという事なのです。
つまり、外部環境の影響に敏感なので社交性がなかったり、対人恐怖症なのでは?の印象を持ってしまいますが、遺伝子で言えばとても外交的である可能性が高いのです。
不思議と愛される看護師や患者様に会ったことはありませんか?喜怒哀楽を共にできるような看護師は患者からも愛されていると思います。出会いと別れを繰り返す訪問看護ステーションや病院の中で、エンゼルケアのたびに涙を流してしまったり。
そんな姿をみて「もっと強くなりなさい!」というのは酷な話なのです。この看護師はエンゼルケアを何度経験しても、涙を流すことが出来るから利用者や患者に愛されるのです。人が好きなのがHSPの才能とも言えますし、この感受性の豊かさも愛される理由である可能性もあるのです。
もちろんこれが”可能性”の話になる為に、HSPすべてに言える話ではありません。メンタルが強くて内向的な人だっています。ただ今回のロンドン大学の結果では、敏感な人はメンタルが弱く、外交的な可能性が高いという結論になっています。
◇:【診断テスト】自分自身のHSPレベルを調べてみましょう!
自分自身がHSPなのかどうか少し気になってきませんか?それではHSPレベルをはかる診断テストをしてみましょう!!早ければ2分くらいで終わりますので、看護師/理学療法士の皆様スマホの計算機アプリを開いてください。
まずは以下の質問にいずれかの点数で回答してください。そしてこの点数を足し算してくださいませ。理想はこの質問をプリントアウトして、点数を書いて「自分はどんな環境に弱いのか?」もわかるようになっていますよ。
1点(全く当てはまらない)
2点(当てはまらない)
3点(やや当てはまらない)
4点(どちらとも言えない)
5点(やや当てはまる)
6点(当てはまる)
7点(非常に当てはまる)
1. 大きな音や雑然とした光景のような強い刺激がわずらわしいですか?
2. 大きな音で不快になりますか?
3. 一度にたくさんの事が起こっていると不快になりますか?
4. いろいろなことが自分の周りで起きていると不快な気分が高まりますか?
5. 明るい光や強いにおい、ごわごわした布地、近くのサイレンの音などにゾッとしやすいですか?
6. 忙しい日々が続くと、ベッドや暗くした部屋などプライバシーが得られ刺激の少ない場所に逃げ込みたくなりますか?
7. 一度にたくさんのことを頼まれるとイライラしますか?
8. 短時間にしなければならないことが多いとオロオロしますか?
9. 他人の気分に左右されますか?
10. ビクッとしやすいですか?
11. 競争場面や見られていると、緊張や同様のあまりいつもの力を発揮できなくなりますか?
12. 強い刺激に圧倒されやすいですか?
13. 痛みに敏感になることがありますか?
14. 子供の頃、親や教師はあなたのことを「敏感だ」とか「内気だ」と見ていましたか?
15. 生活に変化があると混乱しますか?
16. 微細で繊細な香り・味・音・芸術作品などを好みますか?
17. 自分に対して誠実ですか?
18. 美術や音楽に深く感動しますか?
19. 豊かな内面生活を送っていますか?
さあ答えられましたか?それでは全ての点数を合計してみましょう。この研究における平均値は以下のようになります。
全体平均86.68点
男性83.07点、女性89.15点
もちろんこれが診断テストであり可能性の話なので平均点を超えたから良い悪いの話ではありません。平均点を超えていればHSPの傾向があるというだけの話です。90点を超えたくらいからHSPレベルが高い可能性がある為に、「自分のストレス耐性」を意識しておくと良いかもしれません。
くどいようですがHSPは才能であり、点数が高かったから「自分はメンタルが弱いんだ」と落ち込む必要はありません。あくまで可能性の話です。さらに、この診断テストではどのような事に対して感受性が強いのか?刺激を受けやすいのか?も実はわかるようになっています。
感受性が高い事は悪い事ではなく、自分がどのような事象に対して刺激を受けやすいのかを知っていなければ、心が傷つく状況になってしまいやすいという事です。
例えば人間関係から刺激を受けやすい人が、人が多い訪問看護ステーションや病院で働いてしまえば心が傷つく可能性が高い為に、比較的に規模が小さい施設で働く事で人間関係の悩みを解消する事が可能になるのです。環境さえ変える事が出来れば、メリットである外向性や社交性を活かすことが出来るのです。
◇:自分自身がどんな環境に向いているか?傷つきやすいのかを知りましょう!
それでは今回のHSPレベルの診断テストをさらに細かく見ていきましょう!大きく3つの才能(美的感受性、低感覚閾、易興奮性)がHSPにはあり、質問の項目で自分の才能レベルがわかります☆彡特にどんな環境になると感受性が豊かになるのかを知りましょう!!
美的感受性=質問16~19の合計点
平均は全体18.17点、男性17.41点、女性18.68点
質問16から19の合計点を計算し、平均点を上回るようであれば美的感受性が強いということが言えます。美的感受性というのはその名の通り芸術分野での感受性が高いという事です。つまり絵画や音楽やドラマ/映画などの経験が影響を受けやすいと言えます。
映画やドラマをみて感情移入が出来る事は美的感受性と言えます。この部分は感受性が豊かと表現できますし、純粋にこの特典が診断テストから高かったとしてもメリットとして考える事が出来ると思います。訪問看護ステーションや病院の求人を探す時も、芸術分野を利用しながらリハをしている比率が高い所であれば、自部らしく働ける可能性が高いと言えます。
低感覚閾=質問1~7の合計点
平均は全体31.03点、男性29.61点、女性32.01点
これはほんの少しの刺激に対して反応するレベルを表しています。いわゆる鈍感な人はこのレベルが低いと言えますし、些細な事に敏感な人はこの診断テストの結果は高くなる傾向があります。平均点よりも診断結果が高い場合は、些細な刺激にも反応する可能性があると言えます。
小さな刺激や変化にも反応するという事は、訪問看護ステーションや病院の雰囲気が静かである方が安心して働く事が出来ると言えます。例えばベンチャー企業で「これからどんどん伸ばしていくぞ!!看護師だって経営目線で物事を考えるのだ!!」というような理念の会社で働くと、刺激が多すぎてストレスがかかる可能性が高いと言えます。
それよりもある程度歴史があり、変化の少ない看護をしている方が自分らしく働く事が出来るでしょう。このような訪問看護ステーションや病院を選び、働く事ができれば集中力を保って働く事が出来るのです。
この低感覚閾の診断テスト結果が高い人には、実は大きなメリットがあるのです。それは何かといえば、相手の小さなことに気が付ける人だと言えます。小さな変化や微妙な変化に気付く事ができる人で観察能力が非常に高いと言えます。故に傷つく事も人よりも多いですが、人よりも「ありがとう」を言われる可能性も高いと言えます。
基本的には1人でいる事が安心できたり集中できたりしますが、反対にその観察力を活かすのは人がいる時であり、その鋭い観察能力で看護師や利用者や患者の小さな変化を見つけることが出来るのです。
易興奮性=質問8~15の合計点
平均は全体37.48点、男性36.06点、女性38.45点
訪問看護ステーションや病院で怒りっぽい看護師がいたら、この診断テストの結果が高い可能性があります。つまり人や環境からストレス/刺激を感じたときに、自分自身の感情をコントロールできない可能性があります。
この項目の診断テスト結果が平均よりも高いときは、感情に振り回されやすくなるので大病院や法人が大きな訪問看護ステーションのような、人がたくさんいる施設は苦手の可能性が高いでしょう。ストレスや不安に対しても圧倒される可能性も高いと言えます。規模を大きくしていくことを理念としている施設では大きくなると働きにくさを感じる事もあるでしょう。
易興奮性は周りの環境から影響を受けすぎて、自分の感情をコントロールできないイライラと短気な人?と思ってしまえばデメリットのように感じますが、このタイプは人間関係の微妙な変化に気が付く事が出来ます。環境により感情が変化するので、人の感情に対しても敏感ですし、共感力が高い可能性があると言えます。
このように考えると決してHSPがただメンタルが弱いだけの人ではないとわかりますし、自分自身もまた周りもどのような環境にする事がベストなのかを知っていれば、これらの才能を活かすことが出来るのです。
つまり自分自身のHSPレベルを知っていれば、転職活動の時もどのような訪問看護ステーションや病院に転職/就職する事がベストなのか?をある程度想像する事ができますし、環境によるストレスや刺激が少なければ、働いた訪問看護ステーションや病院を辞めることなく働ける可能性も高いと言えます。